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開発の裏側

「充電量」と「走行に使った電力」が一致しないのはなぜ?

充電履歴では30kWh増えているのに、走行履歴の消費電力を合計すると24kWh。この差はどこから来るのか。測定地点や集計期間の違いから、残量%を換算するときの誤差、積算カウンタの癖まで、順番にほどいていきます。

Teslife 編集部
約11分で読めます
雨上がりの山あいに置かれたスーパーチャージャーと、その横に停まる白い Tesla。

今月の充電履歴を開くと、30kWh 入っている。ところが走行履歴の消費電力を足してみると、24kWh しかない。

こういう数字を見ると、どちらかの記録が間違っているのでは、と思いたくなります。

ただ、この2つはそもそも「同じもの」を測っているとは限りません。まず確かめたいのは、どこで測った電力なのか、いつからいつまでの記録なのか、何に使った電力まで含んでいるのか。この記事では、その3つを手がかりに差の正体を追いかけて、最後は数字の作られ方や誤差の大きさまで踏み込んでみます。少し長くなりますが、おつきあいください。

電気の流れには、いくつかの境界がある

車に入った電気は、だいたいこんな順番で流れていきます。

車に入った電気が使われるまでの流れ。電源・充電設備、車両の充電システム、バッテリー、走行や空調などの消費の順に流れ、途中で損失や走行以外の消費がある。

電源側から送り出した量と、バッテリーに実際に蓄えられた量は同じになりません。充電のあいだには、変換で失われる分や、温度を保つために使われる分があるからです。

バッテリーから出ていく電気にも同じことが言えます。すべてが「走行」に使われるわけではなく、駐車中の空調やセントリーモードのように、走っていない時間にも電気は減っていきます。

つまり「充電量」という言葉ひとつとっても、電源側で測ったのか、車両側で測ったのかで意味が変わります。名前が似ていても、測っている境界が違えば、数字は一致しません。

「充電量」に使える数字は、実は何通りもある

境界がいくつもあるぶん、拾える数字もいくつもあります。

測る場所分かる量
壁側電源の供給量
車両の積算値車に入った量
残量の増加蓄えた量(推定)
課金履歴事業者の請求量

それぞれ、こんな点に気をつけたいところです。

  • 壁側(充電設備の電力量計)は、充電時の損失や温度管理の消費まで含みます。そのぶん、車に蓄えられた量より大きく出ます。
  • 積算値は、充電の種類や車両の状態によってカウンタの扱いに癖があります。詳しくはあとで触れます。
  • 残量の増加は、パーセントを kWh に直す計算が必要です。容量の見積もりがずれていれば、そのまま誤差になります。
  • 課金履歴は、課金の単位も丸め方も、どこで測るかも、事業者ごとに違います。

どれも「充電した量」には違いありません。ただ、大きさの順は「壁側 ≧ 車が受け取った量 ≧ バッテリーに蓄えられた量」。同じ値にはならない前提で見る必要があります。走行履歴の消費量と比べるなら、なおさら出どころをそろえたいところです。

月の始めと終わりで、バッテリーの残りは同じだった?

もうひとつ見落としやすいのが、期間の前後にバッテリーへ残っている電気です。

話を単純にすると、収支はこうなります。

バッテリー残量の収支。期間の終わりの残量は、期間の始めの残量に、期間中にバッテリーへ入った電力量を足し、使った電力量を引いた値に等しい。

たとえば、こんな1か月を考えてみます。仕組みを説明するための架空の例で、Teslife の実測値ではありません。

項目電力量
1か月の始めにバッテリーへ残っていた量40kWh
月内にバッテリーへ入った量30kWh
走行で使った量24kWh
走行以外で使った量2kWh
1か月の終わりにバッテリーへ残った量44kWh

40+30−24−2=44。きちんと収支が合っています。

充電量30kWhと走行消費24kWhの差は6kWhですが、これは全部が「ロス」ではありません。4kWhは終わりの残量が始めの残量より増えた分、2kWhは走行以外で使った分です。電源側の供給量と比べるなら、ここに充電時の損失も加わります。

差を分けて読んでみる

この収支は、そのまま差の読み方になります。

充電量 − 走行消費 =(終わりの残量 − 始めの残量)+ 走行以外の消費

左側が、履歴を並べたときに目に入る「差」です。右側の2つが分かれば、「記録がおかしいかも」と疑うのは、説明しきれずに残った分だけで済みます。さきほどの例なら 4+2=6kWh で、差がちょうど説明でき、残りはゼロです。

実際の記録に当てはめると、数kWh ほど残ることがあります。その正体の候補が、このあと出てくる換算誤差や記録の抜けです。

走行以外の消費は、意外と侮れない

例では2kWhと小さく置きましたが、使い方によってはもっと大きくなります。

  • 駐車中の待機。止まっていても、車はシステムを維持するために電気を使い続けています。
  • セントリーモード。カメラとセンサーを動かし続けるので、そのぶん減ります。
  • 乗る前の暖房や冷房、車内の温度を保つ空調。
  • バッテリーを適温に保つための温度管理。寒い朝や暑い夏に効いてきます。
  • 充電中の冷却や暖機(前の節の損失に含まれる分です)。

走行履歴の消費電力は、あくまで走っている区間の分です。駐車中に減った残量は、走行の記録には現れません。長く駐車していた月、セントリーを多く使った月、寒い季節。そうした事情は、そのまま「差」に上乗せされます。

反対に、走行の消費量は、加速に使った電力から回生ブレーキで戻した電力を引いた、正味の値です。下り坂の多い月は、距離のわりに消費が少なく出ます。

回生は、収支の中では相殺される

回生で戻った電力は、すでにバッテリーに入っています。走行の消費量はそのぶんを引いた値なので、消費が小さくなる代わりに、終わりの残量はその分だけ増えます。さきほどの収支式の中では、両辺で打ち消し合います。回生があるから収支が合わなくなる、ということはありません。

ただし、見え方には影響します。走行消費が「距離のわりに少ない」と、記録が欠けているのでは、と疑いたくなります。まず回生で説明がつかないかを確かめてから、記録の抜けを疑うほうが順番として自然です。

長い下り坂では、消費が 0kWh になることがある

Teslife は、走行の消費量を「開始時の残量 − 終了時の残量」から求めています。回生の量を別に測っているわけではありません。

そのため、長い下り坂のように終了時の残量が開始時より高くなった走行では、消費はマイナスにはならず、0kWh として記録されます。電費も同じく 0 になります。

この 0 は「電気をまったく使わなかった」という意味ではありません。純増になったのか、短い移動で残量のパーセントが動かなかったのか、見分けられない値です。0kWh の走行が混じる月は、走行消費の合計が少し小さめに出ます。

パーセントから kWh へ。この換算が誤差のもと

ここからは、数字がどう作られているかの話です。

車から確実に取れるのは、バッテリー残量のパーセントです。電力量(kWh)にするには「1%がだいたい何kWhか」を掛ける必要があって、大づかみには次の式になります。

使った電力量 ≈(開始時の残量% − 終了時の残量%)× バッテリー容量 ÷ 100

この計算には、避けにくい誤差が3つあります。

1. 容量そのものが、推定値

バッテリーの容量は車種やグレード、年式で違いますし、使い込めば少しずつ減っていきます。公称値と、実際に使える量は一致しません。つまり換算の係数には、どうしても見積もりの誤差が入ります。

たとえば容量を実際より10%大きく見積もると、24kWh の走行消費は約2.4kWh 大きく出ます。この誤差は、すべての走行に同じ向きでかかるので、足し合わせても打ち消されません。

2. パーセントの粒度

残量が整数のパーセントでしか分からないと、容量75kWh級で1%がおよそ0.75kWh に当たります。開始と終了を両方丸めるので、1回の走行で最大±0.75kWh ほどずれる計算です。

短い移動ほど影響は大きく、数kmで1%も動かなければ、消費がゼロに見えてしまうこともあります。小数点以下まで分かる残量を使えるときは、このずれをかなり減らせます。Teslife でも、使える場合は小数精度の残量で推定しています。

ちなみに、こちらの丸め誤差は走行ごとにプラスにもマイナスにも振れるので、回数を重ねると一部は打ち消し合います。さきほどの「容量の見積もりが偏っている」場合との違いはそこです。

3. 「いつの残量」を終了地点にするか

走り終えてすぐ充電を始めると、終了時の残量を少し遅れて読んでしまい、充電で増えた分が消費から引かれてしまいます。

そこで Teslife では、走行の終了時の残量を「停まって記録が確定した時点」ではなく、最後に動いていた時点で読んでいます。到着してそのまま急速充電を始めるような場面では、この違いが1回の走行で数kWh の差になりえます。

「充電量」のほうにも、癖がある

ここまでは走行消費の話でしたが、充電量にも気をつけたい点があります。

車両から届く充電量は、充電中にどれだけ入ったかを数え上げた積算値です。この値の扱いは、充電の種類で事情が変わります。

急速充電(DC)は、開始から終了までの積算値をそのまま使いやすい種類です。いっぽう、自宅や目的地での普通充電(AC)では、積算値が前回の充電から持ち越されて、始まった時点ですでに大きな値になっていることがあります。終わりの値だけ見てしまうと、実際に入った量より多く見えます。

そのため Teslife では、普通充電の場合は開始時の積算値を引いて、そのセッションで増えた分を求めています。さらに、バッテリー残量の増え方と明らかに食い違うとき(極端に大きい、残量は上がっているのに積算値が動いていない、など)は、残量の差からの近似に切り替えます。

もちろんこうした補正も完全ではなく、元になる記録に左右されます。通信が途切れて積算値が途中から取れなかった充電は、近似値になったり、記録が欠けたりすることがあります。

充電した月と、走った月は、ずれることがある

月の終わりごろに多めに充電して、翌月に長距離を走る。そうすると、今月は充電量が多く、来月は走行消費が多くなります。

どちらも正しい記録なのに、月ごとに並べただけでは合いません。日をまたぐ充電や走行を、開始日と終了日のどちらで数えるかでも、差は生まれます。

月単位で見て差が大きいときは、期間を3か月や半年に伸ばしてみるのが手軽です。期間の前後の残量の違いは、長くするほど全体の中で小さくなります。残る差が、損失や走行以外の消費の大きさに近づいていきます。

差が大きいときの確認順

気になる差があったら、次の順に見ていくと整理しやすいと思います。

  1. 車両と期間をそろえる。別の車や、違う集計期間を比べていないか確認します。
  2. 数字の意味を確かめる。電源側の供給量か、車両から得た充電量か、走行からの推定値かを区別します。
  3. 期間の前後の残量を見る。期間の終わりに多く残っていれば、その分はまだ走行に使っていません。
  4. 走行以外の消費を考える。駐車中の機能や空調を、どのくらい使ったか振り返ります。
  5. 記録の抜けや重複を探す。通信の切断、連携を始める前の期間、取り込んだデータなどです。
  6. 換算誤差の大きさを見積もる。走行回数が多いか、短い移動が中心か、容量の見積もりが偏っていないかを考えます。
  7. 期間を長くして比べる。残量の差が薄まって、構造的な差だけが残ります。

それでも残る差は、傾向ごとに次のあたりを疑ってみてください。

  • 毎月ほぼ同じ割合で、充電量のほうが大きい。 充電時の損失、走行以外の消費、容量の見積もりの偏りを疑います。
  • 特定の月だけ、極端に大きい。 長期の駐車、セントリー、期間前後の残量の変化、記録の抜けを疑います。
  • 1回の充電だけ、異常に大きい。 積算値の持ち越しや、集計の重複を疑います。
  • 走行消費のほうが大きい。 記録されていない充電(連携前・通信切断)や、別の設備での充電を疑います。
  • 走行消費が極端に小さい。 下り坂の多さと回生を先に疑います。0kWh で記録された走行が混じっていないかも確認します。

残量のパーセントから電力量を出す以上、容量の見積もりの誤差は避けられません。ぴったり合わせたいからといって、分からない部分まで正確な値として扱うのは、避けたいところです。

「差がある」と「間違っている」は別の話

充電量は「補給した」記録で、走行消費は「使った」記録です。そのあいだには、残量の増減、走行以外の消費、測り方の違い、そして換算の誤差があります。

大事なのは、差を見つけたからといって、それを「無駄な電力」や「記録の不具合」と決めつけないこと。まず測っている範囲をそろえて、差を「残量の変化」「走行以外の消費」「損失」「換算誤差」に分けて眺めてみる。それだけで、自分の車の電気の使われ方がずっと読み取りやすくなります。

Teslife も、すべての数字をぴったり一致させることを目指しているわけではありません。それぞれの数字が何を測っていて、どこに不確かさがあるのか。そこを正直にお見せしながら、これからも少しずつ改善していきます。

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